パシフィック・コースト・アイリスのトライアル(2000年5月)

イギリスのロンドン郊外にある、王立園芸協会(Royal Horticultural Society = RHS)のウイズリー・ガーデンは、日本でもよく知られていて、行かれた方も多いと思います。ここは年間を通して、世界中から集められたさまざまな園芸植物を栽培、展示して、来園者に実際の植物を通しての知識の普及、啓蒙活動を活発に行っていますが、ここでの重要な業務のひとつに、いろいろな植物の園芸品種について評価するためのトライアルがあります。
毎年いくつかの品目を決めて広く国の内外から出品を募り、多年生の草花や樹木類については数年間ひとつの圃場で栽培し、詳細な記録をとるとともに、シーズン中何回か、外部の専門家も含めたメンバーによる観察・検討会を経て、すぐれた評価を得た品種にはAGM(Award of Garden Merit)という賞が与えられます。この賞は、その品種が一般の庭園で栽培、観賞するのに優れたものであることを認定しているもので、観賞価値が高いこととともに、種子や苗が容易に入手できること、性質が丈夫なこと、栽培管理に高度な技術を必要としないこと、などが条件になっています。
このトライアルは、このように一般に普及すべき優秀な品種の選定が大きな目的ですが、必ずしも新しい品種だけを対象にしているわけではなく、広く流通している品種については、同名異品種や異名同品種の整理や植物分類上の位置づけの見直しなど、流通の場での名前の混乱を正すことも大きな役割のひとつになっています。対象になっている植物の種類も、一年草だけでなく、宿根草や球根植物にも力点が置かれていて、品種の寿命が長く、植えてから何年にもわたって生き続けるこれらの植物について、信頼のおけるくわしい情報が提供されていることは、実際にそれらを植えて楽しもうとする園芸愛好家にとって有用なだけでなく、これらの種苗を生産、販売している事業者にも、長い目で見れば大きな利益をもたらしているといえます。
トライアルの結果は、最近数年はカラー図版をふんだんに使った冊子が品目ごとに出版されていますし、同じものをRHSのウエブ・サイト(下記)からpdfファイルとして無料でダウンロードすることができます。もちろん英語版しかありませんが、関心のある方には有用な資料です。また、過去にAGMを与えられたすべての園芸品種のリストなども同様にダウンロードできます。日本でも、さまざまな園芸活動の最も基本となる植物素材について、このように信頼性の高いきちんとした情報を提供できるようなシステムを確立したいものです。ジャパンフラワーセレクションがその起点として発展することを願ってやみません。
RHSのPlant Bulletins(トライアルの報告書)
http://www.rhs.org.uk/learning/publications/pubs_bulletins.asp
三輪 智 (JFS委員 元静岡県農業試験場長)

品目ごとに印刷物として公表されているトライアルの報告書(Plant Bulletins)

カンナのトライアル(2002年9月)